食べて応援!次世代に語り継ぎたい、兵庫県産山田錦のこと〈後篇〉 | ハニーマザー
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食べて応援!次世代に語り継ぎたい、兵庫県産山田錦のこと〈後篇〉

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6月5日、ハニーマザーの「米粉のおやつ」に、新しい仲間が増えます。それはなんと、「山田錦サブレ」!スパイスやナッツの個性に負けない、しっかりボディのある米粉の甘み・うまみが感じられる贅沢おつまみです。
山田錦といえば、酒米の王様として知られ、ハニーマザーがある兵庫県の特産品としても有名。そんな山田錦を使って商品づくりができるなんて、想像もしていなかったメンバーの前に、無農薬で育てられた兵庫県産山田錦の米粉があらわれたのは、2020年晩秋のこと。思いがけない出会いが生まれたいきさつと、そこから見えてきた山田錦生産者さんの思いとは?

「お米」の活用法を広げて、生産者さんを応援したい

山田錦を無農薬・無化学肥料で育てておられる有機農家さんをご紹介した前篇に続き、後篇では、その山田錦とハニーマザーがいかにして出会い、ものづくりへとつながったかというストーリーをお伝えしたいと思います。

「無農薬で育った兵庫県産山田錦の米粉を使ってみませんか?」とハニーマザーに声をかけてくださったのは、大阪市内に拠点を構える「空庭」の代表・空庭みよこさん。「街と里、人と農、食、緑との関係を “ぐりぐり(Green Good Link)”回す」ことをテーマに、農家、加工者、販売者、購入者が出会うコミュニティ「大阪ぐりぐりマルシェ」を運営したり、兵庫県をはじめとする各地で六次産業化プランナーとして活動されています。

ちょっと懐かしい昭和のまちなみが残る中崎町に拠点を構える空庭みよこさん

そんな空庭さんが「米粉」に着目しはじめたのは約10年前のこと。日本人の食の原点でもあるお米の利用法を多岐に提案することで、食料自給率を上げ、お米農家さんを応援したいという思いがそこにありました。

空庭さん
「最初は生産者直売所で売られている米粉を買ってマフィンなどを作っていたんですが、当時私もすでに有機農家さんとのつながりがあちこちでできていたので、仕入れた無農薬米や減農薬米を米粉に加工するところから自分でやりたい、と思うようになったんです。それで製粉工場を探していて出会ったのが、大阪・八尾にある会社さん。もともと和菓子用に上新粉などを製造されていたところですが、和菓子の需要が落ちている中で、パンや洋菓子に適した、よりきめ細かい米粉をつくる製粉機を導入されていたんです」

金属で叩き潰したり削ったりするのではなく、湿式気流粉砕式という方法で、一瞬にして気流を飛ばして米と米があたりソフトに細かくなることで、 でんぷんを損傷することなく、ふっくらきめ細かな米粉に仕上がるのだそうです。

 

「米粉」がつなぐ、生産者、加工者、販売者、購入者の輪

農産物を加工して製品にするだけでなく、その活用先を開拓したり、世間に「いかに知ってもらうか」を考えるのが、空庭さんのような「つなぎ役」の腕の見せどころ。そこで、2013年に米粉活用を考えるネットワーク「米粉LOVERS」を立ち上げ、さまざまなワークショップを展開。2015年には米粉レシピブックを発刊し、2016年には空庭さん自身がかつて幼いころに通っていた中央なにわ幼稚園(大阪市中央区)を全館借り切って「米粉ようちえん」というイベントを開催しました。

2016年「米粉ようちえん」の様子

米粉活用に取り組むパティスリーやベーカリーが出店するマルシェのほか、米粉レクチャーやパン教室も盛り込んだこのイベントに、ハニーマザーは出店者として参加することに。

当時、米粉をつかったものづくりを模索中だったハニーマザーにとっても、このイベントは背中を押してくれる大きな力になりました。とくにパティシエの西田晴美は、実家が山形の米農家だったこともあり、後継者不足やお米が売れないなど、稲作に希望が持ちづらい農家さんたちの現状をなんとかできないか、という思いが常にあったのです。

西田晴美(ハニーマザー)
「幼稚園の小さな木の椅子に座って、お米農家さんや製粉会社の方のお話を聞けるのがすごく楽しかったのを覚えています」

空庭さん
「私もこういうイベントを重ねるほどに、アレルギーをお持ちのお子さんがいらっしゃる方だとか、グルテンフリーを実践されている方だとか、米粉に対するニーズや期待をお持ちの方がこんなにたくさんいらっしゃるんだ、と感じましたね」

  

粘りの少ない米を探して行き着いた酒米・山田錦

そうやって米粉普及活動を続ける中で、空庭さんにとって課題となったのは、「米の品種によって粘りが違い、それがパンやお菓子の焼き上がりに影響する」ということ。たとえば、コシヒカリや ミルキークイーンなど、ご飯として食べるにはそのもちっとした食感がおいしいお米は、米粉として使用した際にも、もっちり感が少し出てしまう。一方、ハニーマザーが米粉スイーツで使用している「熊本県産ミズホチカラ」などは、米粉用に品種改良された粘りの少ないお米だからこそ、パサつきを抑えつつふっくらした焼き上がりになるというわけです。

身近なお米で、粘りの少ないものはないか……。そう考えた空庭さんは「酒米」を使うことを思いつきます。

空庭さん
「関西で有名な酒米といえば、山田錦だな、と。たまたま大阪の酒造さんで、自社農園で山田錦を育てていらっしゃるところがあり、しばらくはそこからお酒にならない 中米(ちゅうまい:すこしだけ小さいお米) を買わせていただいてたんですけど、それでは量が足りず、3~4年前から兵庫県で山田錦を無農薬で育てておられる方を探していました。それで昨年、多可町有機農業推進協議会の 生産者さんたちと出会い、多可町の山田錦を米粉にすることができたんです」


丹精込めて育てられた兵庫県産山田錦の米粉は、空庭さんの周りですでに好評。いろんな米粉を使い比べてきた「米粉LOVER」なパティシエやパン屋さんが、山田錦は甘みが豊かで味わい深い、と太鼓判を押しています。

空庭さん
「粘りのなさを求めてたどり着いた酒米でしたが、山田錦は味もそんなにいいんだ!と言うのが私にとっては新たな発見でした」

西田晴美 (ハニーマザー)
「とくにサブレやクラッカーはとてもおいしくできますね。サクサクした口当たりが楽しめて、他の米粉に比べて、明らかに違いを感じます」

 

米粉そのもののうまみを生かした贅沢スナック開発へ

こうしていろんな人の思いが詰まった米粉を受け取ったハニーマザー。テーマは「お酒のおつまみにもなる、大人の贅沢スナックをつくる」ことになりました。乳・卵といった動物性食品や、白砂糖は使わず、アレルギーのある方や、ヴィーガン食・グルテンフリーを実践されている方にも楽しんでいただけるもの、というハニーマザーの基本姿勢はそのままに、どんなフレーバー、どんな形状がふさわしいか、キッチンで何度も試作を重ねました。

とくにこだわったのは厚み。心地よいサクサク感が楽しめて口どけもよい、という食感のために、微妙に厚みを変えて焼き上げては試食を繰り返し、ようやくたどり着いた「黄金比」。召し上がった方にはきっと納得いただけるはず!とキッチンスタッフも笑顔を見せます。

こうして誕生した「山田錦サブレ」。まずは4つのフレーバーをお届けできることになりましたが、すでにキッチンスタッフの間では、新しいレシピアイデアが次々と生まれている様子?!
そのままスナックとしてつまんでもよし、砕いてスープやサラダのトッピングにしてもよし、のヘルシーサブレ。消化がよくて胃腸に負担をかけず、腹持ちもいい、そして何よりおいしい!という山田錦の米粉を、ぜひ多くの方に楽しんでいただければ、うれしく思います。

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この記事を書いた人

松本 幸

松本 幸

ハニーマザーのコミュニケーションディレクターを務めるフリーランスのコピーライター。神戸育ち大阪在住。著書に、2002-2006年のパリ在住経験から企画編集執筆した「パリ発キッチン物語おしゃべりな台所」がある。江戸落語と文楽が好き。週末菜園チャレンジ中。

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